13 農林漁業者等による農林漁業及び関連事業の総合化並びに地域の農林水産物の利用の促進に関する基本方針の本文

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13.農林漁業者等による農林漁業及び関連事業の総合化並びに地域の農林水産物の利用の促進に関する基本方針の本文

農林漁業者等による農林漁業及び関連事業の総合化並びに地域の農林水産物の利用の促進に関する基本方針
平成23年3月14日農林水産省告示第 607号
一部改正 平成23年8月31日農林水産省告示第1673号
一部改正 平成25年2月1日農林水産省告示第 424号

【目次】
第1章 農林漁業者等による農林漁業及び関連事業の総合化の促進
 第1 地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等の推進に関する基本的な事項
 第2 農林漁業者等による農林漁業及び関連事業の総合化の促進の意義及び基本的な方向
 第3 総合化事業及び研究開発・成果利用事業の実施に関する基本的な事項
 第4 その他農林漁業者等による農林漁業及び関連事業の総合化の促進に関する重要事項
第2章 地域の農林水産物の利用の促進
 第1 地域の農林水産物の利用の促進に関する基本的な事項
 第2 地域の農林水産物の利用の促進の目標に関する事項
 第3 地域の農林水産物の利用の促進に関する施策に関する事項
 第4 その他地域の農林水産物の利用の促進に関し必要な事項
第3章 施策の総合的な推進及び関係機関の連携等
 第1 施策の総合的な推進
 第2 関係機関の連携等


この基本方針は、農林漁業経営の改善を図るために農林漁業者等が行う農林漁業及び関連事業の総合化並びに国産の農林水産物の消費を拡大する地域の農林水産物の利用の促進に関する基本的な方針を定めるものである。今後の農林漁業者等による農林漁業及び関連事業の総合化の促進に関する施策並びに地域の農林水産物の利用の促進に関する施策は、この基本方針にのっとり総合的に推進することとする。なお、この基本方針は、施策の実施状況等を踏まえつつ、見直しの必要性や時期等を適時適切に検討するものとする。


【第1章 農林漁業者等による農林漁業及び関連事業の総合化の促進】
<第1 地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等の推進に関する基本的
な事項>
我が国経済が停滞し、少子・高齢化や、それに伴う国内の飲食料品市場の量的な縮小が進む中、農林漁業者の所得の減少、担い手不足の深刻化等により農山漁村の活力は低下しており、食料の安定供給や多面的機能の発揮といった農山漁村に期待される役割を確保するためには、その活力の再生が不可欠である。このため、国内市場の活性化や海外市場の開拓により、農林水産物等(地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律(以下「法」という。)第3条第2項に規定する農林水産物等をいう。以下同じ。)の需要全体の拡大を図ると同時に、農林漁業者等による農林漁業及び関連事業の総合化の促進により、農林漁業者の所得を確保する必要がある。同時に、地域の多様な事業者が、農林漁業者との連携の下、農林水産物、バイオマス・太陽光・水力・風力等の農山漁村に由来する資源を有効に活用し、グリーン・ツーリズム、輸出、発電、バイオ燃料、バイオマスプラスチック等の製造等を行う取組の促進により、地域内に雇用と所得を確保することが重要である。このような視点に立ち、政府は、地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等に関する施策を講じ、農山漁村における六次産業化を強力に推進する。

<第2 農林漁業者等による農林漁業及び関連事業の総合化の促進の意義及び基本的な
方向>
1 農林漁業者等による農林漁業及び関連事業の総合化の促進の意義
農林漁業者等による農林漁業及び関連事業の総合化は、農林水産物等の付加価値の向上分が農林漁業経営に取り入れられるものであるため、その促進により、農林漁業の持続的かつ健全な発展と農山漁村の活力の再生を期するものである。同時に、バイオマス等の農山漁村に由来する資源をバイオ燃料等のエネルギー源やバイオマスプラスチック等の原料として利用するなどの取組の促進により、環境への負荷の少ない社会の構築に寄与しようとするものである。
2 農林漁業者等による農林漁業及び関連事業の総合化の促進の基本的な方向
農林漁業者等が、自らの生産に係る農林水産物の加工、消費者への直接販売、実需者との契約取引、輸出、農林漁家民宿、農林漁家レストラン等での提供等に主体的に進出し経営を多角化・高度化する取組を推進する。また、農林漁業者等がバイオマスを加工し、得られたエネルギーや製品の販売に進出する取組や、地域の多様な事業者が太陽光・水力・風力等を活用してエネルギーを生産し、農林漁業者等による農林漁業及び関連事業の総合化の用に供する取組を推進する。さらに、「緑と水の環境技術革命」等の施策と連携しつつ、農林漁業者等による農林漁業及び関連事業の総合化の促進に特に資する研究開発及びその成果の利用を推進する。


<第3 総合化事業及び研究開発・成果利用事業の実施に関する基本的な事項>
1 総合化事業
(1)総合化事業の内容
総合化事業は、次のアからウまでに掲げる全ての要件を満たす必要がある。ア 農林漁業者等が行う事業であること。
(ア)総合化事業の主体となる農林漁業者等
法第3条第1項の「これらの者の組織する団体」とは、農業協同組合、集落営農組織その他法人格の有無にかかわらず農林漁業者を直接又は間接の構成員とする協同組織をいい、同項の「主たる構成員又は出資者となっている」とは、議決方法に関する定款等の定めに応じ、農林漁業者又は同項の「これらの者の組織する団体」が、意思決定について主導的な役割を果たし得るものであることをいう。なお、法第5条第1項の認定を受けた農林漁業者等について、株式会社農林漁業成長産業化支援機構又は株式会社農林漁業成長産業化支援機構法(平成24年法律第83号)第21条第1項第2号に規定する支援対象事業活動支援団体(以下「機構等」と総称する。)が法第3条第1項に規定する構成員等となった場合にあっては、機構等は、株式会社農林漁業成長産業化支援機構支援基準(平成24年12月11日農林水産省告示第2556号)3の規定に基づき、意思決定における農林漁業者の主導性の確保に努めることとなる。このため、農林漁業者又は法第3条第1項の「これらの者の組織する団体」は、当該農林漁業者等の総株主又は総社員の議決権の数のうち機構等が有する議決権の数を除いた残余の議決権の過半数を有していることにより、引き続き、当該農林漁業者等の意思決定について主導的な役割を果たし得るものであると認められる。
(イ)総合化事業を促進するための措置を行う者
総合化事業計画に、認定を受けようとする農林漁業者等以外の者の行う法第5条第4項各号に掲げる措置に関する計画を含める場合には、認定を受けようとする農林漁業者等と当該措置を行う者との間の事業費の負担、損益の分配等が明確にされる必要がある。
なお、当該措置のうち、同項第4号に掲げる措置に関する計画を含める場合には、認定を受けようとする農林漁業者等以外の農林漁業者等を当該措置を行う者として位置付けることができる。
イ 農林漁業経営の改善が図られるものであること。
総合化事業計画の認定に当たっては、総合化事業を行うことにより以下の2つの指標の全てが満たされ、もって農林漁業の経営基盤の強化及び農林漁業の生産力の増強が図られることを要件とする。総合化事業の実施期間開始時点における農林漁業経営を当該各指標によって把握することが適当でない者については、総合化事業の実施により、実施期間終了時点の単年度において、農林漁業及び農林水産物等の加工又は販売の事業の全体の売上高が経営費を上回っていること(実施期間終了時点の単年度において当該要件を満たすことは困難であるが、実施期間終了後からおおむね5年以内の単年度において当該要件を満たすことが十分に予測され、かつ、当該予測が適当なものであることを証する書面によりその理由が明らかにされている場合を含む。)を要件とする。認定を受けようとする団体が、その経営において農林水産物等の生産(法第3条第3項に規定する生産をいう。以下「生産等」という。)を直接行うものでない場合にあっては、その構成員等である農林漁業者の経営指標を用いることができる。
(ア)農林水産物等及び新商品の売上高
総合化事業に係る種類の農林水産物等及びこれを原材料とする新商品の売上高の合計が、当該事業の実施により、実施期間開始時点と比較して、実施期間終了時点までに、計画期間が5年間の場合は5パーセント以上、計画期間が4年間の場合は4パーセント以上、計画期間が3年間の場合は3パーセント以上増加すること。ただし、新規の作物、家畜等を導入し、当該作物、家畜等に係る農林水産物等又はこれを原材料とする新商品についてのみ総合化事業を実施する場合は、当該事業の実施により、実施期間終了時点の単年度において、農林漁業及び農林水産物等の加工又は販売の事業の全体の売上高が経営費を上回っていることとする。
(イ)農林漁業及び関連事業の所得
総合化事業の実施により、農林漁業及び農林水産物等の加工又は販売の事業の全体について、所得が実施期間の開始時点から終了時点までの間に向上しており、かつ、実施期間終了時点の単年度において売上高が経営費を上回っていること。
ウ 次に掲げる措置のいずれかを行うものであること。
(ア)自らの生産等に係る農林水産物等をその不可欠な原材料として用いて行う新商品の開発、生産又は需要の開拓法第3条第4項第1号の「新商品」とは、認定を受けようとする農林漁業者等がこれまでに開発、生産又は需要の開拓を行ったことのない商品をいい、同号の「その不可欠な原材料」とは、新商品を特徴付ける機能、効用等を付与する原材料をいう。なお、同号の「構成員等」には、農業協同組合連合会の会員である農業協同組合の組合員等の間接の構成員等を含む。
(イ)自らの生産等に係る農林水産物等について行う新たな販売の方式の導入又は販売の方式の改善
法第3条第4項第2号の「新たな販売の方式の導入」とは、認定を受けようとする農林漁業者等がこれまでに用いたことのない販売の方式を導入することをいい、同号の「販売の方式の改善」とは、荷さばき業務の合理化、調製、保管又は配送の共同化、品質管理又は販売情報管理の高度化等、既に用いている販売の方式を改善することにより収益性の向上を図ることをいう。
(ウ)(ア)又は(イ)に掲げる措置を行うために必要な生産等の方式の改善
法第3条第4項第3号の「生産の方式の改善」とは、生産等の方式が(ア)又は(イ)に掲げる措置に適合したものとなるようにすることをいい、新たな生産等の方式の導入を含む。この場合の「新たな生産等の方式の導入」とは、認定を受けようとする農林漁業者等がこれまでに用いたことのない生産等の方式を導入し、又は新規の作物、家畜、水産動植物等の導入を行うことをいう。
(2)総合化事業の実施期間
計画期間は5年以内とするが、3年から5年までであることが望ましい。

2 研究開発・成果利用事業
(1)研究開発・成果利用事業の内容
研究開発・成果利用事業の主体については、研究開発及びその成果の利用に様々な知見を活用する観点から、業種、事業規模等について特段の制限を設けないが、当該事業は、次のアからウまでに掲げる研究開発又はその成果の利用のいずれかを行う事業である必要がある。
ア 農林水産物等の生産等又は販売の高度化に資する研究開発
法第3条第5項第1号の「農林水産物等の生産又は販売の高度化」とは、研究開発により得られる成果を活用した場合に、既存の技術等を活用した場合と比較して、農林水産物等の生産等若しくは販売について、効率性及びコストの面で一定程度の改善が図られること、又は既存の技術等では生産等若しくは販売を行うことができない農林水産物等の生産等若しくは販売が行われることをいう。
イ 新商品の生産又は販売の高度化に資する研究開発
法第3条第5項第2号の「新商品の生産又は販売の高度化」とは、研究開発により得られる成果を活用した場合に、既存の技術等を活用した場合と比較して、新商品の生産若しくは販売について、効率性及びコストの面で一定程度の改善が図られること、又は既存の技術等では生産若しくは販売を行うことができない新商品の生産若しくは販売が行われることをいう。
ウ ア又はイの研究開発の成果の利用
法第3条第5項の「成果の利用」とは、ア又はイの研究開発の成果を実際に地域に導入することにより、当該成果について、現場に即した利用体系の確立、事業化等を促進し、将来において農林漁業者等による農林漁業及び関連事業の総合化に貢献する取組である。なお、利用される研究開発の成果については、研究開発・成果利用事業による研究開発の成果のみならず、研究開発・成果利用事業以外の事業等による研究開発の成果を利用することが可能である。
(2)研究開発・成果利用事業の実施期間
計画期間は5年以内(新品種の育成を行う事業に関する計画にあっては、10年以内)とする。

3 総合化事業及び研究開発・成果利用事業の実施に当たって留意すべき事項
総合化事業及び研究開発・成果利用事業の実施に当たり、当該各事業の用に供する施設の整備を行う場合には、次に掲げる事項に留意するものとする。
(1)農地法の特例関係
農地法(昭和27年法律第229号)の特例(法第12条)が適用される農地又は採草放牧地の面積については、農地又は採草放牧地の農業上の効率的かつ総合的な利用を確保するため、2ヘクタールを上限とする。
(2)都市計画法の特例関係
都市計画法(昭和43年法律第100号)の特例(法第14条)が適用される農林水産物等の販売施設については、総合化事業の実施期間の経過後も、市街化を促進することのないよう、当該事業により導入又は改善が行われた販売の方式によって農林水産物等の販売が継続されるものと認められ、かつ、建築物の用途を変更して当該特例に係る予定の建築物以外の建築物にすることがないものと認められることを要する。


<第4 その他農林漁業者等による農林漁業及び関連事業の総合化の促進に関する重要
事項>
1 情報の提供
国及び地方公共団体は、全国的な統計調査、先進的な取組事例に係るケーススタディ等により把握した情報、施策の内容、今後の展開方向等を幅広く集約し、インターネット、パンフレット、各種の行事等の手段を活用し、農林漁業者等を始めとする多様な主体に分かりやすい形で情報提供するよう努める。

2 研究開発の推進及びその成果の普及
国及び地方公共団体は、試験研究機関等との連携により、農林水産物等及び新商品の生産等又は販売に関する新技術の研究開発を広く推進するとともに、都道府県の普及指導センターその他の普及指導員を配置している機関(以下「普及組織」という。)が、試験研究機関、産学連携を支援する機関等と連携し、研究開発の成果の農林漁業者等への効果的な普及を図るよう努める。

3 支援体制の整備
農林漁業者等の身近に存在する地方公共団体、商工会、商工会議所、農業協同組合、森林組合、漁業協同組合、金融機関等(以下「地元機関」という。)が農林漁業者等からの相談等に迅速かつ適切に対応することができるよう、地元機関と国の地方支分部局等との間で緊密なネットワークを構築し、六次産業化に関連する施策等の情報について十分な連絡調整を行う。また、このようなネットワークの下、地方農政局、北海道農政事務所及び内閣府沖縄総合事務局(以下「地方農政局等」という。)に総合的な窓口を設置し、申請手続の説明、各種支援施策の紹介等を行う。同時に、農林水産物の生産・加工、商品開発、マーケティングや経営管理、さらには、関連する法律制度等に関する知識・経験を有する者を「6次産業化プランナー」として全国に配置し、個々の農林漁業者等に対して、積極的に地域資源を活用した六次産業化の様々な取組の普及・啓発を図るとともに、総合化事業の構想段階における提案、計画作成の支援、事業化後のフォローアップ等の総合的なサポートを実施する。あわせて、「6次産業化プランナー」の活動内容等を定期的に評価することにより、サポート体制の充実に努める。


【第2章 地域の農林水産物の利用の促進】
<第1 地域の農林水産物の利用の促進に関する基本的な事項>
1 基本的考え方
地域の農林水産物の利用は、農林漁業の持続的かつ健全な発展、農山漁村の活力の再生、消費者の利益の増進、食料自給率の向上等に重要な役割を果たすとともに、地域資源の有効な活用、食品循環資源の再生利用、環境への負荷の低減等の効果を有するものであり、その促進が非常に重要である。このため、国及び地方公共団体は、法第26条から第33条までに定める以下の基本理念に基づき、生産者、事業者、消費者等の協力を得て地域の農林水産物の利用の促進に取り組むよう努める。
(1)生産者と消費者との結びつきの強化
(2)地域の農林漁業及び関連事業の振興による地域の活性化
(3)消費者の豊かな食生活の実現
(4)食育との一体的な推進
(5)都市と農山漁村の共生・対流との一体的な推進
(6)食料自給率の向上への寄与
(7)環境への負荷の低減への寄与
(8)社会的気運の醸成及び地域における主体的な取組の促進
2 都道府県及び市町村の促進計画の策定
都道府県及び市町村は、地域の農林水産物の利用の促進に関し、その区域の特性を生かした自主的な施策を策定するため、この章及び次章の規定を勘案するとともに、その区域の実情を踏まえて、地域の農林水産物の利用の促進についての計画(以下「促進計画」という。)を定めるよう努める。

<第2 地域の農林水産物の利用の促進の目標に関する事項>
地域の農林水産物の利用の促進のために特に重要と考えられる以下の事項につい
て目標を設定する。
1 直売所の年間販売額に関する目標
直売所(農林水産物(食用に供されるものに限る。以下同じ。)及びその加工品をその生産者等が消費者に販売するため、生産者等その他の多様な主体によって開設された施設をいう。以下この章において同じ。)における農林水産物及びその加工品の販売は、消費者に地域の新鮮な農林水産物を購入する機会を提供するなど、地域の農林水産物の利用を促進する上で中核となる取組であり、安定的な経営を行う直売所の数が増加することが重要であることから、主として農畜産物を取り扱う通年営業の直売所について、年間販売額が1億円以上のものの割合を、平成32年度までに50%以上とすることを目指す。
2 学校給食における地場産物の使用に関する目標
学校給食に地域の農林水産物を使用することは、地域の自然や文化、産業等に関する理解を深めるとともに、生産者の努力や食に関する感謝の念を育む上で重要であるほか、地域の農林水産物の活用にもつながることから、学校給食において地場産物を使用する割合(食材数ベース)について、食育基本法(平成17年法律第63号)第16条第1項に規定する食育推進基本計画に定める目標を達成することを目指す。
3 都市と農山漁村の共生・対流の推進に関する目標
地域の農林水産物の利用の促進には、都市と農山漁村の交流の促進、都市農業の振興等を通じ、都市住民が農山漁村で活動する機会や食と農林漁業への認識を深める契機の提供が重要であることから、農家民宿等のグリーン・ツーリズムのための施設の年間延べ宿泊者数を、平成32年度に1050万人とすることを目指す。

<第3 地域の農林水産物の利用の促進に関する施策に関する事項>
地域の農林水産物の利用を促進することにより、国産の農林水産物の消費を拡大するため、国及び地方公共団体は、以下の施策に取り組むよう努める。
1 地域の農林水産物の利用の促進に必要な基盤の整備
(1)地域の農林水産物の利用の促進に寄与する直売所等の整備
国及び地方公共団体は、地域の農林水産物の利用の促進に寄与する生産施設、処理加工施設、販売施設等の整備への支援に努める。なお、直売所が整備される場合に、単独の整備に加え、農林水産物の処理加工施設、レストラン、体験農園等の併設、道の駅(国土交通省道路局長の登録を受けることにより「道の駅」という登録商標の使用をすることができる施設をいう。)、高速道路のサービスエリア、駅舎内の商業施設等の活用等により、地域の農林水産物の利用が効果的に促進されるよう努める。また、マルシェ(生産者等が市街地においてテント等を連ね農林水産物及びその加工品を定期的に直接販売する会場をいう。)の活用その他の地域の特性に応じた販売の取組への支援に努める。
(2)農地法等の規定による許可についての配慮
促進計画の趣旨に適合する直売所の整備に係る農地法及び都市計画法の規定による許可の申請について、国の関係行政機関の長又は都道府県知事(地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の19第1項の指定都市、同法第252条の22第1項の中核市又は同法第252条の26の3第1項の特例市の長を含む。)は、事前の相談への対応、許可に係る事務の迅速かつ適正な処理及びそれぞれの事務を担当する部局間の連絡調整等の必要な配慮を行うよう努める。
2 直売所等を利用した地域の農林水産物の利用の促進
(1)農林水産物及びその加工品の販売状況を管理するシステムの導入等による直売所の運営及び機能の高度化等国及び地方公共団体は、直売所における経営の効率化、集客力の向上等に効果のあるPOSシステム(売上実績を商品単位で集計するシステムをいう。)に係る販売管理機器等をリース等により導入する取組への支援に努める。また、地域の直売所間のネットワーク及び広域ネットワークの構築等の直売所間の連携の確保及び強化により品揃えの確保や共同集荷を図る取組への支援に努める。
(2)既存の施設の活用の促進
国及び地方公共団体は、直売所が不足している地域における既存の施設の有効活用を促進するとともに、補助事業等で整備した既存の施設の直売所への転用が行われる場合には、関係法令に従い、当該転用に係る事務を迅速かつ適正に実施するよう努める。
(3)生産者等による農林水産物の加工品の開発の促進
国及び地方公共団体は、消費者・実需者の需要に対応した農林水産物の付加価値の向上、周年的な品揃えの確保等により生産者の所得の向上を図るため、生産者等が農林水産物の冷凍処理、洗浄、カット等の一次加工やその加工品の開発・生産を行う取組への支援に努める。
3 学校給食等における地域の農林水産物の利用の促進
(1)関連する施策との連携
国及び地方公共団体は、地域の特性に応じ、米の消費拡大、小麦・米粉、食肉の利用拡大、健康面からの野菜、果実、牛乳、乳製品、魚介類等の摂取増加等に資する施策と学校給食等における地域の農林水産物の利用の促進に関する施策との連携に努める。
(2)生産者と関係者との連携の強化等
国及び地方公共団体は、生産者等と栄養教諭その他の教育関係者、食材納入業者等の関係者が連携して行う、学校給食等の調理の実情に応じた規格・処理基準の作成、不作・不漁時の補完体制を含めた安定的な供給体制の整備等の取組を推進するよう努める。また、生産者の組織する団体、地方公共団体等が、地域の農林水産物の種類、収穫時期、生産量等に係る情報を提供することができるよう、必要な体制の整備に努める。
(3)学校給食以外の分野での取組の促進
国及び地方公共団体は、幼稚園及び保育所、高等学校、大学、企業等の食堂、老人福祉施設、病院、宿泊施設、宅配給食等の中食 産業、外食産業等の多様な施設・形態における取組を促進するとともに、国や地方公共団体が所管する公共施設等において地域の農林水産物を利用するよう努める。
4 地域の需要等に対応した農林水産物の安定的な供給の確保
(1)多様な品目を安定的に生産する体制の整備等
国及び地方公共団体は、多様な品目を安定的に生産・供給するための新品種や栽培方法の導入、地域の消費者及び食品関連事業者の需要に応じた一次加工の取組等に対する支援に努める。また、鳥獣害防止対策を持続的に実施する観点から、捕獲又は殺傷をした鳥獣の肉等について、その安全性を確保しつつ、加工、販売、料理への活用等を行う取組を推進するよう努める。
(2)地域における流通に係る事業者との連携
国及び地方公共団体は、地域の農林水産物や地域において供給が不足している農林水産物の安定供給に資するため、情報交換会の開催、マッチングの支援等を通じて地域における流通に係る業者と実需者との連携体制の構築に努める。
(3)食の安全と消費者の信頼の確保
国は、科学的根拠に基づき、食品中の危害要因の含有実態調査や農林水産物・食品の安全性の向上のための取組の提示等を行う。地方公共団体は、国が提示した当該取組を現場に普及するよう努める。また、国及び地方公共団体は、関係者間の意見及び情報の交換の促進による信頼関係の構築・強化、消費者の選択に資する食品表示の適正化等の取組を推進するよう努める。
5 地域の農林水産物の利用の取組を通じた食育の推進等
国及び地方公共団体は、国民一人一人が食について自ら考え、判断を行う能力を養うため、地域の農林水産物の利用の取組を通じて、食育の推進及び生産者と消費者との交流を図るよう努める。
(1)地域の農林水産物の生産、販売等の体験活動の促進
国及び地方公共団体は、農林水産物・食品の生産、販売等の現場における消費者の体験活動の促進や生産者との交流の機会の提供に努める。また、農山漁村における農作業等の宿泊体験活動、観光関係者と農山漁村地域が連携したグリーン・ツーリズムの推進の取組等による都市と農山漁村の交流の促進に努める。
(2)地域における伝統的な食文化を伝承する活動等に対する支援
国及び地方公共団体は、地域の農林水産物を利用した郷土料理を参考とした学校給食の提供、地域の食材等の活用による商品・料理の開発・提供、農林水産物・食品の地域ブランド化等、地域の伝統的な食文化を伝承する活動等への支援に努める。
6 国民の理解と関心の増進
国及び地方公共団体は、地域の農林水産物の利用に取り組む者の活動事例等のホームページ、機関誌等への掲載、地域の農林水産物を利用した各種イベントの開催・協力等により、国民の理解と関心の増進に努める。その際には、生産、流通、販売の各段階における生産者や事業者の取組や実情について、コスト面も含めた理解がなされるよう配慮する。
7 調査研究の実施等
国及び地方公共団体は、地域の農林水産物の利用を促進する施策の効果的な実施を図るため、農林水産分野に係る温室効果ガスの排出削減効果の的確な評価等による環境への負荷の低減に貢献することができる手法の検討その他の調査研究に努める。また、直売所、学校給食、農林水産物の処理加工施設等における地域の農林水産物の取扱状況等に関する情報の収集、整理及び提供に努める。

<第4 その他地域の農林水産物の利用の促進に関し必要な事項>
1 農林漁業者及びその他関係者の意見の反映
国及び地方公共団体は、地域の農林水産物の利用の促進に関する施策の策定に当たり、現地調査、農林漁業者との意見交換等により、当該施策についての意見を積極的に把握し、当該施策の策定に反映させるよう努める。
2 多様な国民運動との連携
地域の農林水産物の利用の促進に当たっては、個々の国民が主体的に行動することが重要であることから、国及び地方公共団体は、多様な国民運動と地域の農林水産物の利用の取組との連携を推進し、当該取組に対する国民の参加が促進されるよう、必要な環境の整備に努める。


【第3章 施策の総合的な推進及び関係機関の連携等】
<第1 施策の総合的な推進>
国及び地方公共団体は、総合化事業計画に位置付けられた直売所の整備等の地域の農林水産物の利用の取組に対し、法に基づく措置、地域の農林水産物の利用に対する補助事業等の支援策を一体的に講ずるなど、農林漁業者等による農林漁業及び関連事業の総合化並びに地域の農林水産物の利用を総合的に推進するよう努める。

<第2 関係機関の連携>
1 地方農政局等並びに地方農政局及び北海道農政事務所の地域センターと地方公共団体等との連携
地方農政局等並びに地方農政局及び北海道農政事務所の地域センターは、農林漁業者等及び地域の多様な事業者による取組に対して指導及び助言等を行うに当たり、普及組織その他の地方公共団体の組織、独立行政法人、株式会社日本政策金融公庫等と密接に連携する。
2 関係省庁相互間の連携
国は、人材の育成・確保、地域の活性化に資する研究開発、地域づくりの支援、食育の推進等の施策についての情報共有等、関係省庁相互間の連携に努める。
3 多様な主体の連携の促進等
国及び地方公共団体は、交流会や商談会の開催等を通じて多様な主体の連携を促進するとともに、当該連携に資するコーディネーターの育成、情報ネットワークの構築等を推進するよう努める。また、女性・高齢者の有する豊富な知識・経験が十分に活用されるよう努める。