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センターの6次化事例
2019年5月27日

『市場ルートがない「ちびしいたけ」を活用し、消費者の方に喜んでもらえる商品を障害者就労支援施設から発信したい』


事例21


パーラー山と田んぼ
木村 直隆 さん

 

木村様(アップ)
木村 直隆 さん

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山と田んぼさんで開発した新商品「森のキャビア」
椎茸栽培の過程で間引いた「ちびしいたけ」を活用した商品

 

『市場ルートがないちびしいたけを活用し、消費者の方に喜んでもらえる商品を障害者就労支援施設から発信したい』

 

事業者: パーラー山と田んぼ 木村 直隆 さん (石巻市)

主な販売先:パーラー山と田んぼ、ぎんの星(東松島)

6次産業化への取組:椎茸栽培過程で間引いた「ちびしいたけ」を活用し、新商品開発を行っている。既存商品においてブランドを確立した。

取組後の成果:石巻市6次産業化・地産地消推進センターの支援員など第三者に関わってもらうことにより、商品開発において様々なアイディアがあることを知り、よい刺激になった。また、授産施設以外の食品メーカーなどで生産される商品に勝るとも劣らない競争力のある商品を作ることができた。

※石巻市6次産業化・地産地消推進センターを、
以下より「6次化センター」と表記いたします。

 


6次化センターへのご相談のきっかけ


『連携事業者との取り組みの中で、センターの存在、役割を知った』

 パーラー山と田んぼは障害者の方が働く就労支援事業所です。手作業で1つ1つ行う仕事などの受注を承っています。ある時、石巻市内の事業者さんから、お茶のパッケージ作り(組み立て作業)のご依頼を受けました。その事業者さんがもともと6次化センターを利用されており、これがきっかけで私たちもセンターの存在を知りました。

 お茶のパッケージ作りを進める中で、何度か6次化センターのスタッフや支援員の方ともお会いする機会があったのですが、それを通し、6次化センターが事業者に対してどのようなサポートやアドバイスをしてくれるのかを知ることができました。

 ちょうどその頃、自社でも新商品の開発を検討しており、このお仕事を受けたことがきっかけとなり、我々も6次化センターに相談してみようということになりました。

 


木村さんと6次化センターの取り組み内容


『既存商品のブランディング、そして新商品の開発へ』

 当店では、パンやケーキなど、当日販売、当日消費の商品を主に扱っています。その中で、日持ちする商品は、既存商品の焼き菓子と、ヨーグルトにかけて食べる「ヨーグルトシュガー」です。こういった日持ちする商品のラインナップも強化していきたいと考えていました。そこで6次化センターに相談し、「ヨーグルトシュガー」のラベルデザインを一新し、ブランディングを行うことにしたのです。支援員の方には、ラベルデザインやブランド名の考案をお手伝いいただき、写真のような商品に仕上げることができました。ブランドコンセプトは、「心と体にいいもの」、「ここから始まる」ということでブランド名を「cococara(ココカラ)」としました。

 

ヨーグルトシュガー(瓶)※色補正
cococaraヨーグルトシュガー
てんさい糖とドライフルーツを合わせた商品。ラインナップは全4種類。左から、マンゴー&アップル、パイン&アップル、バナナ&アップル、いちじく&アップル。

 

 「cococara」が形になり、以前から考えていた新商品作りにもいよいよ着手することになりました。考えていたのは、近くの障害者就労支援施設で栽培している椎茸をメインとした商品です。椎茸と言っても、普通の椎茸ではありません。栽培過程で間引くとても小さな椎茸です。一般的には、椎茸農家さんが間引き作業をする際は、間引いた椎茸は、作業効率上ぽろぽろ地面へ落としてしまうのが常です。しかし、こちらの施設では、小さな椎茸も1つ1つハサミを使って石づきを丁寧にカットし、収穫しています。この間引いた椎茸を「ちびしいたけ」と呼んでいますが、1日に500グラム程とれます。ここの施設では、冷凍保存し、給食のお味噌汁に入れたり、佃煮にして月1回の販売会で販売したりしています。しかし、「これでは働いている方たちのお給料に繋がらない」そう思い、この状況を何とかみんなが喜ぶ方向に持っていけないかと、「「ちびしいたけ」を使って売れる商品づくりをしよう!」と思い立ちました。

 そこで6次化センターに相談したのです。まずは支援員の方のご協力を得ながら、「ちびしいたけ」を使用したレシピづくりに取り組みました。「ちびしいたけ」は見た目に非常に珍しく、目を惹きます。実は、普段私たちのお店では、この「ちびしいたけ」を隔週土曜日に営業しているランチのスープやサラダに取り入れています。初めて食べられる方は「これはなんだ?」といった感じで、まじまじと見られています。インスタ映えする一品とも言えます。「ちびしいたけ」のお味はというと、普通の椎茸のようでありながら、食感の違いからなのか「ちびしいたけ」にしかない味わいです。この特徴を活かしながら、商品づくりに取り組みました。ぜひみなさんに、この新しい味わいを楽しんでいただきたいです。

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収穫したばかりの「ちびしいたけ」

提供メニュー※色補正

隔週土曜日のランチ営業で提供されているメニューの一例
サラダに乗っている黒いものが「ちびしいたけ」

 


6次産業化に取り組んだ成果


『第三者が入ることによりアイディアの幅が広がり、従業員にもいい刺激になった』

 いざ始めた6次産業化でしたが、実際のところ、日々の業務をこなしながらの取り組みだったため、なかなか思うように進められないでいました。しかし、そこへ6次化センターの支援員の方に入ってもらい、第三者の視点が加わったことで良い刺激を受け、6次産業化へ向けてのスピードが増しました。自分たちだけでは出てこない発想をたくさんご提案いただき、こんなアイディアもあるのかと考えの幅もぐっと広がりました。こういった、これまでは触れることのなかった新たな発想、考えに触れることは、職員の意識向上にも繋がったと思います。

 また市場には、一般の食品メーカー等で生産、販売されている優れた多様な商品がありますが、そういった商品に遜色のない、競争力のある商品に仕上がったという手応えを感じています。授産施設などで作られる商品は、一般消費者の手に渡っていくのだという意識があまりなく、市場における競争力があると言えるものが少ないように感じています。しかし選ばれるもの、売れるものを作り、それを売っていくことで初めて施設利用者の方々のお給料になります。それを考えると、手に取ってもらえる商品にするための努力、工夫は怠ることができません。

 

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「森のキャビア」の試作の様子

 ダイズ選定※色補正済み パウダーシュガー ケーキショーケース※色補正
森のキャビア以外にも、普段から生産されている商品作りに対する研究に余念がない。商品は、味はもちろんのこと、インスタ映えするようなおしゃれなものが多い。

 

 この他、6次産業化の取組みを始めたことによって、人脈が広がったことも大きな成果です。いろんな方に様々な出会いを繋いでいただき、既存商品(製造しているきな粉など。店頭以外での販売はしていない。)の販路も広がりました。こうやって少しずつ、今は店内だけで販売している商品も外で売っていく仕組みを勉強しながら、輪を広げていけたらと考えています。

 


6次産業化への取り組みで苦労する点


『新たなチャレンジを既存の業務と並行して進める』

 6次産業化、それは当然私たちにとって初めてのチャレンジです。進め方も試行錯誤の状況で、それを日々の業務と並行して進めることは非常に難しいものでした。イメージしていたようには、なかなか商品開発を進められずジレンマもありました。しかし、6次化センターの支援員の方の協力もあり、今日までに少しずつ取り組みが形になり、段階ごとの成果も実感しています。こうやって、少しずつ前進していければと思っています。

 


販売商品への想い・こだわり


『障害者施設で作っている商品。そして市場ルートがないものを生かす。』

 私たちが取り組んできた新商品含め、現在当店で扱っているパンやケーキ、焼き菓子は全て障害者の方が関わって作っているということです。ここは障害者就労支援施設なので、当たり前ではあるのですが、もう一歩踏み込んで考えてみてください。当店の商品を買っていただくと、働かれている方たちのお給料に繋がるという事実があります。だからこそ、私たちは「この商品を買いたい!」と思っていただけるような商品を一生懸命作っています。先にも述べたように、市場で売られる他の商品に負けない良いものを作るよう努力しています。今回開発した新商品「森のキャビア」も、みなさんのご期待に沿える商品に仕上がったと自信を持っています。

 また、特に今回の「ちびしいたけ」の商品化は、これまでは市場価値がなかったものに価値を付加するという観点から取り組んでいます。規格外のもの、市場ルートがないものにおいて、創作することにより、またパッケージや販路が変わることによって活かせるものがある、私はそう考えています。今後も、そこを探りながら商品作りに取り組んでいきたいなと考えています。

 


6次産業化を検討している方々に伝えたいこと


『「売れるものを作る」基本の考えに立ち返って』

 私たちと同じように、商品開発や販売をされている授産施設の方や、事業者の方とお話しする機会が多いのですが、そこで感じるのは、「販売することを前提に作る」、これが疎かにされているケースが多いように思います。6次産業化にあたっては、「これを作りたい」「この商材で作りたい」というのはよくあります。もちろん、こういった考えがないと商品の完成図が描けないので重要な発想ではあるのですが、その根幹に「売れるものを作る」という土台がないことには、モノが出来上がっても「商品」として成立しないのではないか、と私は考えます。これから6次産業化に取り組まれる方には、ぜひ販売することを念頭に置いて取り組んでいただけると良いかと思います。

 また併せて、商品が思った以上に売れなくても、もしかすると売る場所や、内容量、パッケージ等を変えるなどの発想の転換で、売れるものに変わる可能性があります。こういった感覚も持って商品作り、販売、そして改良にあたるといいのではないかと思います。

 しかし、そうは言っても初めて6次産業化に取り組む場合は、当然そういった視点がなかったり、また情報不足だったりします。そんな時は、悩まずに6次化センターに相談されることをおすすめします。こういった知識や情報、アイディアは、6次化センターや支援員の方が豊富に持っています。一度相談すると、本当に視点が変わります。いろんな制度や考え、やり方があるということを知ると、自身の6次産業化の取組みも好転していきます。

 

山と田んぼ店内
山と田んぼさんの店内の様子
水色の天井と木を基調としたディスプレイ、家具などでとてもおしゃれな空間

 

パン陳列※色補正済み
美味しそうなパンが数多く並ぶ店内

 

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パンの他、ケーキや焼き菓子なども数多く取り揃えている

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