『生産者自らが米を直接販売できる体制を構築し、食シーンに合わせてブレンドした新商品をシリーズ化したい』
事例11
株式会社 吉田ファーム
代表取締役 吉田 和夫さん
『生産者自らが米を直接販売できる体制を構築し、食シーンに合わせてブレンドした新商品をシリーズ化したい』
事業者:吉田 和夫 さん (石巻市蛇田)
農家:米(ササニシキ、ひとめぼれ、つや姫、まなむすめ、
みやこがねもち)、イチゴ、ほうれん草
主な販売先:農業協同組合、飲食店
6次産業化への取組:光選別機・計量器等の導入。ブレンド米の消費者直接
販売を考慮したパッケージやデザインの制作。
取組後の成果:米の選別・計量環境が充実し、品質の高い精米を自身
で行えるようになった。食シーンに合わせたブレンド
米を製造、販売できるようになった。
※石巻市6次産業化・地産地消推進センターを以下より「6次化センター」と表記いたします。
6次化センターへのご相談のきっかけ
『米を農協に出荷するだけでなく、加工商品の開発、販売に取り組み、安定的な収益を確保したい』
以前から6次産業化という言葉はテレビなどで知っていたので、農協への出荷以外に加工商品の販売で安定的な収益を確保したいと考えていました。
具体的には、イチゴのジャムへの加工や、精米とブレンドを自ら手掛けることで差別化を図ったブレンド米商品などです。
東北農政局が行っている生産者の意見交換会に参加した際に6次産業化が話題になり、職員の方に詳しく教えてほしいとお願いしたところ、6次化センターを紹介されました。
6次化センターへの支援希望内容
『米の選別・計量環境を整え直接販売できる体制を構築したい。また、生産する多品種の米をブレンドした商品を開発し商品の差別化を図りたい』
吉田さんの相談内容は、
①米の光選別機、計量機導入に活用できる補助制度を知りたい。
②食シーンに合わせたブレンド米商品の開発をしたい。
③ブレンド米のパッケージやデザイン制作に活用できる補助制度を知りたい。
ということでした。
吉田さんと6次化センターの取り組み内容
『米の光選別機や計量機の購入や、小分けパッケージ用のデザインやブランドロゴ作成のため助成制度へ申請を行った 』
6次化センターへの相談と同時期に、市内寿司店との取引を始めていたため、寿司専用のブレンド米の開発をすることにしました。
また、飲食店との取引だけでなく、消費者へ販売することも視野に入れ、寿司用、おむすび用、炊き込みご飯用、和食用の4つのブレンド米を作成することになりました。
私自身が生産から米のブレンドまでを手掛けるためには、米の光選別機と計量機を導入しなければならなかったため、6次化センターと共に、総合化事業計画(*1)と石巻市6次産業化・地産地消推進助成金(*2)の施設整備事業への申請に取り組みました。
また、商品パッケージやブランドロゴの作成資金に充てるために、石巻市6次産業化・地産地消推進助成金(*2)の新商品開発事業への申請もサポートしていただきました。
補助制度への申請は初めてのことでしたが、専門家の方に書類作成について指導していただきましたので、特に苦労することなく申請することができました。
*1「総合化事業計画」とは
農林水産物等の生産・加工・販売を一体的に行う事業活動を「総合化事業」と
いいます。農林漁業者等が経営の改善を図るために、事業計画を作成し農林
水産大臣に申請し、認定を受けると様々な支援が受けられます。
*2「石巻市6次産業化・地産地消推進助成金」とは
石巻市では、地域資源の高付加価値化を図るため、1次産業・2次産業・3次産
業を営む事業者がネットワークを形成して取り組む事業に対し助成金を交付します。
対象事業は、①新商品開発、②販路開拓、③施設整備 です。
③施設整備については、総合化事業計画の認定を受ける必要があります。
6次産業化に取り組んだ成果
『商品開発を行うことで、消費者ニーズの捉え方がわかるようになった』
6次化センターや専門家の方々のサポートのおかげで、無事にブレンド米を製造することができました。
商品開発の過程で分かったことは、30kgの米袋で販売すれば良いと思っていたものが、一般消費者を対象とした商品となると1kgや5kgの小分け包装の方が好まれるということでした。
普段業務用に出荷している私達からしてみれば考えつかないことでしたし、驚きでもありました。
商品開発をする際は、消費者ニーズを正確に把握することが必要だと学びました。
今後の商品開発にぜひ役立てようと思います。
『展示商談会への出展は、商品のブラッシュアップを図るための良い機会だということがわかった』
ブレンド米の販路開拓のために、 6次化センターの紹介で展示商談会に出展しました。
ブースに訪れたバイヤーの方に試食をしていただきながら商品の説明を行うのですが、すぐに食べた方の反応が受け取れることがとても新鮮でした。
また、他の地域から出展されている米販売関連事業者の商品を見ることができるので、良い刺激になりました。
展示商談会の出展により、バイヤーの反応や他事業者の開発している商品など、商品のブラッシュアップに役立つような情報を得ることが出来ました。
展示商談会へ出展後は、普段スーパーなどで買い物をする際の商品を見る目が変わりました。
6次産業化への取り組みで苦労する点
『商品のパッケージやブランドロゴの選考に手間取った』
助成制度の申請は支援員の方の手厚いサポートがありましたので、特に苦労したとは感じませんでした。
その他で苦労したことといえば、ブランドロゴや商品パッケージのデザイン選考でした。
デザイナーの方に依頼し、いくつかのパターンを考えていただくのですが、私一人では決めることができず、遠くに住んでいる子供達にまで連絡をとり、話し合いに時間を掛けた末に決めました。
納得のいくものができましたので、デザイナーの方に感謝しております。
今回の取り組みで生まれたブランドロゴ
販売商品への想い・こだわり
『生産者自らが識別から計量までを管理している“食シーンに合わせたブレンド米”を、安心して皆さんに食べてほしい。』
米の生産者だからこそ知ることを消費者に伝えたいがために、こだわり抜いた商品になっています。
どのブレンドも基本はササニシキの配合率を高めにしていますので、粘りが適度であっさりとしており日本食に良く合います。
米のブレンドは、プロの方に試食を重ねて吟味していただいた上で配合を決定しましたし、米・食味鑑定士の資格を取得した息子とともに生産した米を厳選しています。
また、光選別機での識別は玄米の状態と精米した状態の2段階で行いますので、より安定した品質で商品の供給が可能となっています。
現在は、寿司店へのブレンド米提供が主体となっていますが、他の飲食店でも取り扱っていただくなど徐々に販売先の拡大を行えています。
また、一般消費者向けに開発した小分けパッケージの商品は、ブレンド米を取り扱っていただいている寿司店にパンフレットを置かせていただき、実際に食べていただいた方から個別に注文を受けて販売することを狙ったデザインにしました。
最終的には、百貨店等でのギフト販売で取り扱っていただくことが夢です。
6次産業化を検討している方々に伝えたいこと
『6次産業化は、生産活動に更なる意欲を掻き立てる希望のツール』
6次産業化の取り組みによって、米作りを原点から振り返ることができ、取り組み以前からいだいていた「米に対する姿勢は誰にも負けない」という思いや、土作りへのこだわりに一層磨きをかけることが出来ました。
6次産業化に取り組む醍醐味は、自身の生産物に更なる価値を見出し、より美味しいものを皆さんに届けたいという意欲が湧いてくることだと思います。
どこかから仕入れているのではなく、自分で生産したものを商品化して販売することができるので自信につながります。
農協へ出荷して安心してしまうのではなく、新たな取り組みにも臆せず挑戦し、自分で商品化したものを自分で説明して反響を得ることの方が何倍も嬉しいことがわかりました。
ただし、自分のやる気次第で成果が左右されるため、販売に関する仕組みをしっかり把握するなど、知識の習得や情報収集を行いモチベーションを保つ必要があると感じました。
現在は、ブレンド米の事業に注力していますが、軌道に乗れば、イチゴジャムの加工にも取り組みたいと考えています。
ブレンド米製造現場の様子
株式会社 吉田ファーム
代表取締役 吉田 和夫 さん