『石巻産の原材料こだわった商品開発を行い、石巻の魅力を多くの人に伝えたい』
事例12
株式会社 まめ福フードカンパニー
代表取締役 阿部 光好 さん
『石巻産の原材料こだわった商品開発を行い、石巻の魅力を多くの人に伝えたい』
事業者:阿部 光好 さん (石巻市蛇田)
販売業:自社商品、卸売商品
主な販売先:観光物産店、飲食店
6次産業化への取組:石巻産の原材料にこだわった新商品の開発。
取組後の成果:石巻で生産された米や水産物を活用した
新商品開発に成功した。積極的に首都圏で
行われる展示商談会へ出展し、販路開拓が
進み年々売上を伸ばしている。
※石巻市6次産業化・地産地消推進センターを以下より「6次化センター」と表記いたします。
6次化センターへのご相談のきっかけ
『石巻産の原材料にこだわって開発した新商品を、定番商品に育て上げ、石巻の魅力を発信したい』
仲卸業を中心に事業運営をしようと考えていましたが、創業してから半年が経った頃、石巻の事業者は仲卸業者を通さないのが主流だと分かりました。
また、地元商品を仕入れて地元小売業者へ販売するとなると利幅が少ないため、利益に繋がりにくいことも分かりました。
そこで、自社ブランドの商品を開発し、販路を開拓したいと考えました。
石巻市で事業を起こしたのですから、石巻の産品を使用した商品開発を行い石巻の魅力を伝えられる商品にしたいと考えました。
活用できる補助制度がないか探すために石巻市のホームページを閲覧していたところ、6次化センターの名前を見つけ、何かのきっかけをつかみたいと思い相談することにしました。
6次化センターへの支援希望内容
『自社ブランドの新商品開発から販売先確保までをサポートをしてほしい』
阿部さんの相談内容は、
①自社ブランドの商品開発のため、商品企画からブランディングまでをサポートしてほしい。
②新商品開発に使用できる補助制度を紹介してほしい。
③新商品開発後の販売先確保のサポートをしてほしい。
ということでした。
阿部さんと6次化センターの取り組み内容
『専門家を交えて商品企画からブランディングまで行い、同時に商品開発のための補助制度への申請や販路開拓のための展示商談会への出展を行った』
商品の構想が全くない状態で相談しましたので、石巻の特産品を活用した商品について6次化センターと話し合いを重ねました。
その結果、石巻のササニシキと海産物を使用した炊き込みご飯セット(浜ごはん)を、 6次化センターに所属する専門家の方々と共に開発することになりました。
炊き込みご飯の素の味付けはフードコーディネーターの方から、ブランドロゴや商品デザインはデザイナーの方から支援を受けました。
同時に、石巻市6次産業化・地産地消推進助成金(*1)の新商品開発事業への申請もサポートしていただき、商品開発資金に活用することが出来ました。
販路開拓への取り組みでは、首都圏で行われる展示商談会の紹介を受け、出展することになりました。
バイヤー対応への手ほどきは受けたものの、実際に商談会に出向きやり取りをするのは私自身なので、出展回数を重ね商品PRをするのに大変な思いをしました。
しかし、その苦労が実を結び、今では販売数が徐々に増えているのを実感しています。
*1「石巻市6次産業化・地産地消推進助成金」とは
石巻市では、地域資源の高付加価値化を図るため、1次産業・2次産業・3次産
業を営む事業者がネットワークを形成して取り組む事業に対し助成金を交付します。
対象事業は、①新商品開発、②販路開拓、③施設整備 です。
③施設整備については、総合化事業計画の認定を受ける必要があります。
6次産業化に取り組んだ成果
『事業者間の繋がりができた』
「浜ごはん」を開発できたこと自体も大きな成果ですが、事業者間の繋がりができたことが、今回の取り組みの中で一番の成果だと感じています。
自社ブランドの商品開発にあたって、多くの1次産業者、2次産業者、3次産業者の方々と出会い、交流できたのはとても良いことでした。
「浜ごはん」の加工・製造を依頼している業者の方とも取引を継続していますし、鮭の骨抜きを担当していただいた業者の方とは、今回のご縁がきっかけで、漬魚の販売に取り組むことになりました。
石巻で事業を行うためには、人と人との関わりがいかに大切かということがわかりました。
今後も6次化センターには、石巻の事業者間のマッチングサポートに更に力を入れていただきたいと思います。
6次産業化への取り組みで苦労する点
『開発商品に見合ったターゲット設定が難しかった』
商品のターゲット設定に大変苦労しました。
6次化センターに所属する専門家の方に相談し、調理の簡便さや小分けにした商品パッケージを重視した結果、ターゲットを50代の2人家族に設定しました。
販路開拓のために何度も展示商談会に参加しましたが、ターゲット設定に対してバイヤーの方からは視野を拡げるべきというご意見が多くありました。
例えば、炊き込みご飯の素を単体で販売し消費者の好みの白米で調理できるようにすることや、ターゲットにする年代を拡げるべきということでした。
浜ごはんが販売されるようになって1年経ちますが、最近になってやっと適切なターゲット層がわかるようになってきました。
他地域から来た観光客や若い方がよくおみやげに購入されるとの声を販売店の方からいただいています。
試作の段階で専門家の方と試食をしながらターゲット設定を行いましたが、もっと幅広い年齢層のモニターの方に試食会などを通して意見をいただくべきだったと思いました。
ごま鮭すし飯は、酢飯仕立てのためおにぎりに最適
『事業者連携による6次産業化は、農水産物の収穫時期の調整と連携事業者の意思疎通が課題になる』
事業者連携で6次産業化に取り組む際に注意することは、連携事業者が本当に6次産業化に取り組む意志があるのかを確認し、共有することだと思います。
また、原材料となる農水産物の収穫時期や生産量の把握が必要だと思います。
連携事業者が集まったものの、原材料の収穫時期が既に終了している場合や、現在出荷又は加工・製造販売している分で原材料の供給が手一杯だという事実が明らかになることも経験し、連携事業者間の事前の打ち合わせにもっと時間を割くべきだと実感しました。
通年販売するためには原材料の保存方法も検討しなければなりませんし、連携体制が整わないまま事業を進めるのは大変危険です。
事業者の状況把握や情報共有を積み重ねた上で、事業者連携に取り組むべきだと思います。
浜ごはんに使用する素材を吟味する阿部光好さん
販売商品への想い・こだわり
『浜ごはんの特徴は、手間なく石巻の特産品を味わえること。材料と調理法の提案を合わせることで、手軽に食べられる商品にしたかった』
浜ごはんの開発で一番こだわったところは、食材の提供だけでなく、食べ方の提案も合せて行える商品にすることでした。
石巻の特産物をPRするための商品ですから、とにかくたくさんの方に食べてもらいたいと考え、まずは私達が食べ方の提案をし、調理法を考える手間を省き消費者が手に取りやすくすることを検討しました。
工夫した調理をするのが楽しみという方も多いと思いますが、あえて簡単に調理できる炊き込みご飯の素にしました。
まずは石巻の魚介の味を知っていただくことが、石巻の特産物の消費に繋がると思いますし、味を知っていただいた上でご家庭での調理方法の工夫などを楽しんでいただくきっかけになれたら良いと思っています。
今回の取り組みは、企業理念でもある「宮城の食材をあなたの食卓に」を体現できたと思いますし、具材と生米を合わせた特徴的なパッケージングにしたことでメディアにも取り上げられ話題になりました。
これからの商品開発でも「食べ方の提案」を取り入れるよう努めていきたいです。
6次産業化を検討している方々に伝えたいこと
『6次産業化は、開発する商品の具体的な構想や販売計画を明確にしないまま安易に手を出すべきものではない。』
商品の構想が特にないまま6次産業化に臨んだことから、将来的な構想や計画づくりに大変苦労しました。
また、市場調査が不十分でしたのでどの世代の方々の好みにマッチするか把握しきれずターゲット設定にも苦労しました。
6次産業化を行うのであれば、事前知識の習得とビジョンの明確化が重要です。
個人的な意見ではありますが、見切り発車で安易に手を出すべきものではないと思います。
ですが、他地域の方に地元の特産品の魅力を伝えるためのツールとしては大変良いものと思います。
特産品のPRをするという点で言えば、消費者が自宅でちょっとした調理を加えるだけで食べることのできる提案型のセット商品であるべきだと私は思います。
地元の人間である私達だからこそ知るその特産物の美味しい食べ方を、消費者が簡単な調理で再現できることが大切だと思のです。