『本格的スパニッシュスタイルの商品を開発し、石巻から発信したい』
事例 5
有限会社 キマル木村商店
木村 旬壱さん
『本格的スパニッシュスタイルの商品を開発し、石巻から発信したい』
事業者:木村 旬壱 さん (石巻市)
水産物加工業:牡蠣、ホタテ、タコ、ほや
主な販売先:全国市場、生協
6次産業化への取組:石巻市の水産物を使用した新たな加工商品の開発
取組後の成果:石巻で漁獲された水産物を利用した加工商品の
開発に成功
展示商談会への参加を重ね、販路開拓が進みつつある
※石巻市6次産業化・地産地消推進センターを、以下より「6次化センター」と表記いたします。
6次化センターへのご相談のきっかけ
『ここ石巻から、本格スパニッシュスタイルの新商品を発信したかった』
「アヒージョ」はスペイン語で「にんにく風味」を表し、オリーブオイルとにんにくで魚介類を煮込むスペインを代表する料理です。
海外では、アヒージョを食べるときのマナーとして、パンやライスにオイルをかけて食べるなど、オイルを先に食べるまたは飲むといった風習があります。
日本では食用油を積極的に摂取したり飲むといった文化はなく、むしろ敬遠されています。
海外出張時に、いわしをオイル漬けにしたオイルサーディンをオイルごと食べている光景を目の当たりにし、衝撃を受けました。
石巻の魚介類を使用したオリーブオイル漬けの加工商品を開発し、新たな日本の食文化として発信していけたらどんなに素晴らしいことかと思い、商品開発に踏み切りました。
石巻の商品ということを印象づけるために、スペインと石巻両者に縁のある「支倉常長」を商品コンセプトやパッケージに使用させていただきたいと考えたのですが、商標使用の許可申請の方法等については分かりませんでした。
行政機関等に問合せを行ったところ、6次化センターを紹介していただいたので、相談をすることにしました。
6次化センターへの支援希望内容
『新商品の開発から販路開拓までをサポートしてほしい』
木村さんの相談内容は、
①本格的なスパニッシュスタイルの新商品のブランディングをしたい
②新商品開発に活用できる、補助制度を知りたい
③新商品開発後の、販路開拓のサポートをしてほしい
ということでした。
木村さんと6次化センターの取り組み内容
『新商品の開発やブランディング、販路開拓に向けた取り組み』
新商品開発のために6次化センターにサポートしていただいたのは、「支倉常長」の商標使用の許可取得、商品のブランディングに関わるパッケージやプロモーション等の支援、商品開発に活用できる助成制度の申請でした。
活用した助成制度は石巻市6次産業化・地産地消推進助成金(*1)の新商品開発事業です。
パッケージのデザインや製作では、商談会に参加した際にバイヤーの方からご意見をいただき改良を重ねることができました。
また、販路開拓のために多数の商談会や販売会を紹介していただきました。
商談会は、相談した6次化センターだけでなく、サポートしていただいた専門家の方から紹介していただき、商談会当日のサポートとして参加していただくこともありました。
商談会の他にも、イベント等の販売会場に出店する機会をいただき、収益に繋げる手法を学ぶことができました。
*1「石巻市6次産業化・地産地消推進助成金」とは
石巻市では、地域資源の高付加価値化を図るため、1次産業・2次産業・3次産業を営む事業者がネットワークを形成して取り組む事業に対し助成金を交付します。
対象事業は、①新商品開発、②販路開拓、③施設整備 です。③施設整備については、総合化事業計画の認定を受ける必要があります。
商談会出展時の様子
アヒージョ製品
6次産業化に取り組んだ成果
『展示商談会出展やテストマーケティングを行う機会をふやし、商品のブラッシュアップに繋げたい』
6次化センターには、販路開拓のため、全国各地で行われる展示商談会を紹介していただきました。
また、商談会に出展する際の商品のディスプレイやバイヤーの方への対応等についても手ほどきを受けました。
商談会への出展は、一度出展したからといってすぐに取引を成約できるわけではありません。
出展回数を重ねることで名前と商品を覚えていただき、数ヶ月後に商談をいただくということが多いのです。
しかし、1回の展示会出展が商談に繋がらなくとも、商品を手にした人の意見を直接受け取ることができますので、これだけでも成果と捉えて今後の商品開発や改良に役立てたいと考えています。
今後も、いくつかの商談会出展や販売会出展を控えていますので、更なる商品のブラッシュアップに向け取り組んでいきます。
6次産業化への取り組みで苦労する点
『多様な分野の専門家からアドバイスを受けられるが、それらを一つの方向にまとめ上げるのは自分の決断』
正直に申し上げますと、今までの取り組みで苦労したと感じたことは特にありません。
6次化センターを利用すると、自分の課題に対応した多様な分野の専門家からアドバイスを受けることができ、相談をした私達を先導するようにサポートを行ってくれます。
私達も最終的なゴールをイメージして共に取り組めますが、その先導に甘えることなく「自分の意志を伝え貫くこと」は、6次産業化を成功させるために必要だと思います。
「サポートに頼り切る」のではなく「自分で考え判断する力をつけること」が重要だと思っています。
販売商品への想い・こだわり
『安全な商品を消費者に届けたいという思いから、徹底した品質管理にこだわった』
牡蠣のオリーブオイル漬けは、日本の一般家庭で広く取り入れていただけるよう利便性を考慮し、常温保存ができて加熱調理がいらない商品にしました。
そのため、徹底した品質管理のもとで製造しています。
商品の殺菌処理には、常温での保存性を高め、耐熱性のあるボツリヌス菌の殺菌にも効果があるレトルト殺菌を採用しています。
本来瓶詰めの商品はレトルト殺菌が困難ですが、キャップにレトルト用のものを使用するなどして、瓶詰めのレトルト殺菌を可能にしました。
殺菌処理に使用するレトルト釜
『本格的なスパニッシュスタイルを追求し、使用した原材料にはかなりのこだわりがある』
海外でアヒージョのオイルを先に食べる習慣があるのは、アヒージョが魚介の旨みが溶け込んだオイルを楽しむ料理だからです。
牡蠣のオリーブオイル漬けの商品開発の際にも、この旨みが溶け込んだオイルの再現に特にこだわりました。
また、オイル漬けに使用する牡蠣は、そのおいしさを楽しんでいただくために、炙ったり、くん液に漬けるのではなく本物の燻製にしています。
本格的なスパニッシュスタイルを表現しつつ、燻製牡蠣の香りと旨みを壊さないよう、使用するオイルの選定にも時間をかけました。
少々値の張るオリーブオイルですが、スパイスの香辛料とも相性がとても良く、燻製牡蠣の味わいや香りを損なうことなく本格的スパニッシュスタイルを表現できるため、ここだけは譲れませんでした。
そのこだわりが功を奏したのか、牡蠣のオリーブオイル漬けを口にした方々には「まるでチーズを食べているような濃厚さがある」といったお褒めの言葉をいただいております。
本当に、私の自慢の一品です。
支倉バルシリーズロゴ
6次産業化を検討している方々に伝えたいこと
『一つの事業者が6次産業化を行うだけでなく、他事業者とのコラボレーションが、これからの石巻地域の農林漁業活性化に繋がる』
6次産業化には、一つの事業者が1次、2次、3次産業のすべての工程を行うケースもあれば、1次産業者が主体となり2次、3次産業者と連携して行うケースもあります。
すべての工程を一人で行う単独型も大変素晴らしいことですが、地域の活性化に繋げるには、事業者間で連携して行う連携型が盛んに行われることが重要だと私は考えます。
6次産業化は、商品開発自体を目的化してしまうことがありますが、そうではなく商品開発を一つの手段として考えてほしいのです。
事業者同士が互いの弱点を補い合い活路を見出すことは事業の差別化にも繋がり、石巻の更なる復興にも繋がると思います。
「ほやのしそ風味」をパッケージングする様子
キマル木村商店 木村旬壱 さん