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センターの6次化事例
2017年8月7日

『レンタル加工室の利用をやめ自宅敷地内に加工所を建設し、農薬・化学肥料不使用栽培の米や野菜を使った加工品を製造しJA直売所等で販売したい』

こんにちは。石巻市6次産業化・地産地消推進センターの青柳です。


この度、石巻市6次産業化・地産地消推進センター(以下6次化センター)では、石巻市内で6次産業化を進めている農林漁業者の取組みをインタビュー記事としてご紹介しております。

ご自身の生産した農林水産物に更なる付加価値をつけて所得向上を目指す試みの事例を参考に、6次産業化を検討されてみてはいかがでしょうか。

 

 

 


事例 1


 

食彩工房 陽里(ひだまり)

及川 雄一郎 さん
及川 厚子  さん
及川厚子さん天ぷら及川さん事例トップ使用画像
          

『レンタル加工室の利用をやめ自宅敷地内に加工所を建設し、農薬・化学肥料不使用栽培の米や野菜を使った加工品を製造しJA直売所等で販売したい』

 

      事業者:及川 厚子 さん (石巻市和渕)

       農家水稲、きゅうり、キャベツ、なす 、白菜、大根

 6次産業化への取組:加工品製造、販売 「食彩工房 陽里(ひだまり)」
          (惣菜、おこわ類)

   取組後の成果:加工品売上額 自宅敷地内に加工所建設後の加工品
          売上額は2倍になる

 

 

 


6次化センターへのご相談のきっかけ


『外部の加工調理室を時間借りすることの時間と費用の無駄を省きたい』

 

所属するJA直売所「やさいっ娘」で野菜を提供していましたが、加工品も製造販売したくなり「やさいっ娘」の加工調理室を借りて、おにぎりや赤飯を作り提供を始めました。

しかし、加工調理室を利用するには、加工作業のできる時間が決まってしまいます。週3日、朝から米研ぎを始め、結局商品を陳列できるのはお昼を過ぎることもありました。

自宅から米や加工原料を運び、米が炊き上がるまでその場で待たなければならず、商品のできあがり時間によっては販売機会を失うこともあり、この時間と費用の無駄を解消するために自宅に加工所を持ちたいと考えました

 

 


6次化センター支援希望内容


自宅に加工所を作り、農作業の合間に効率良く加工品製造のできる環境を作りたい

 

及川さんの相談内容は、

①自宅敷地内に加工所を作りたい

②惣菜類、漬物類、おこわ商品類の加工製造認可を取得したい

③製造する商品の充実を図り収益向上につなげたい

④利用可能な補助金を教えて欲しい
ということでした。

 


及川さんと6次化センター取り組み内容


総合化事業計画(*1)を作成し、商品づくりと販路開拓の目標をたて、加工所建設へ

 

総合化事業計画を練るために6次化センターの支援員の方々と何度も話をし、何度も書き直し、ようやく農林水産省から総合化事業計画の認定(平成28年9月)をいただきました。

この間に、JAいしのまきと6次化センターの共催する「商品開発セミナー」も受講し、商品づくりのあり方や販路拡大の方法、品質管理、衛生管理等の基礎を学び、新しい惣菜を試作したり、保健所の加工品製造認可に向けた準備も進めました

加工所建設にはそれなりの資金が必要だし、本当にやっていけるか不安もありましたが、ここまで準備してきたことで覚悟を決めることができました。

また、総合化事業計画の認定を受けたおかげで、資金面では石巻市6次産業化・地産地消推進助成金(*2)を利用することもでき平成29年3月に加工所が完成しました。

 

*1「総合化事業計画」とは
 農林水産物等の生産・加工・販売を一体的に行う事業活動を「総合化事業」といいます。農林漁業者等が経営の改善を図るために、事業計画を作成し農林水産大臣に申請し、認定を受けると様々な支援が受けられます。


*2「石巻市6次産業化・地産地消推進助成金」とは

 石巻市では、地域資源の高付加価値化を図るため、1次産業・2次産業・3次産業を営む事業者がネットワークを形成して取り組む事業に対し助成金を交付します。対象事業は、①新商品開発、②販路開拓、③施設整備 です。③施設整備については、総合化事業計画の認定を受ける必要があります。


実際に設置された加工場
DSC_0037DSC_0042②

 


6産業化に取り組んだ成果


加工品の品目も販売先も増え、加工品の売上が以前の約2倍

 

自宅敷地内に加工所を持ったことで効率の良い時間の使い方ができるようになりました。

農産物の生産は夫中心、加工品製造は私中心ですが、農家の本分である「生産」で手を抜くことはできないので繁忙期には農作業に多くの時間をとられることになります。

それでも畑と加工所が近いので農作業の合間に加工所に戻り食材の下ごしらえをしたり、販売先への商品配達に向かうこともできるので効率は良くなりました。

販売先から新たな商品として弁当仕出しの依頼もありますが、今は自分でできる範囲で事業を進め足元を固める段階かと思い、新しい要請はお断りしている状態です。

この様な状況ですが、自分の加工所を持って1年目にして加工品目も販売先も増え、加工品の売上は以前の約2倍で推移しています

順調にいけば1年あまりで建設費は回収できるかも知れません。

 

 

今まで廃棄するしかなかった作物に価値が生まれた

無農薬で栽培している野菜についた虫を、見逃せば野菜に穴があくこととなります。

見つけた虫を一匹ずつ駆除することには限度がありどうしても出荷できなくなる野菜が出ます。

虫穴部分を取り除けば美味しく食べられる野菜や、大きさ・形が出荷基準を外れる野菜は農家が自家消費する分以外は廃棄せざるを得ませんでした

こういった作物も廃棄せず加工すれば付加価値のついた商品に生まれ変わることを実感しています

手間を掛けて大事に育てた野菜が無駄なく活用できることは生産者としても大きな喜びです。


直売所で販売されているお惣菜の数々

野菜の天ぷら
②及川厚子さん天ぷら_0620
おにぎり
⑥及川厚子さん_おにぎり0620

はくさいやきゅうりのお漬物。加工所内で真空パッケージもできる。
⑩及川厚子さん_お漬物(白菜)0620 
⑧及川厚子さん_お漬物(きゅうり)0620

おこわ製品にもバリエーションが。赤飯、たけのこ等を加工・販売している。アサリご飯などもある。
⑬及川厚子さん赤飯
及川厚子さん_たけのこおこわ①

 

 


販売商品への想い・こだわり


自家製の農作物を販売できる喜びと自信が生まれた

 

極力農薬や化学肥料を使わない野菜や米を、自らの手で加工し商品として販売できることに、とても満足しています

また、それらを加工できる環境を整えることは、簡単なことではない中、加工場の設置ができ嬉しく思います。

以前より商品が製造しやすくなり、販売先の増加につながりました。

そして多くの方に商品を手に取っていただける機会が増えたことが、私たちにとって自信と誇りにつながりました

 


6次産業化への取り組みで苦労する点


家庭向け料理と販売商品との違いに最初は戸惑うことも

 

料理のレパートリーは多い方かもしれません。

若い頃に地域の文化風習から学んだと思います。

例えばこの地域では葬式で出すお膳にはその家庭で手作りした料理を並べていました。

調理手伝いをする中で同じ料理でも家庭によって味付けのバリエーションがあることに触れ勉強になりました。

加工品づくりもこの応用と考えていたのですが、本格的に事業として始めると家庭内で作る食事とは違い、多くの人に受け入れられる商品として、いつも同じ味に仕上げることは大変なことだと思い知らされました。

試作した商品を販売先量販店の店員さんや近所の方々に食べていただき方向性を決め、調味料の調整を重ねてレシピを固めるようにしています。

更に、原材料となる農産物そのものの味には作る畑や時期など様々な要因で変化がでるので加工時には常に微調整が必要となりますが段々短時間で仕上げられるようになってきました。

また、事業の費用面では加工所建設など大きな金額に目がいきがちですが、その他にいろいろと細かいお金が必要なことも知っておく必要があると思います。

水道光熱費、配送費などランニング費用の他に、食品衛生責任者資格取得、保健所の食品加工認可、食品製造業としてのPL保険加入等々の必要な費用を洗い出しておくことは大事だと思います。

また現在、有機JAS認定も目指しています。認定をいただくと、1年毎に費用が発生します。

 


6次産業化を検討している方々に伝えたいこと


生産者(農家)にしかわからないことを多くの人に伝えるきっかけ

 

加工品製造販売は農家の所得向上という目的を果たすための1つの手段として有効だと実感しています。

それとは別に、消費者に農業そのものや食の安全等を伝えるきっかけとすることが可能かも知れないと感じています。

農家は「農家しか知らない野菜のコト」を知っていますが、生産者としてはそれを消費者に伝える手段を持っていませんでした。

消費者の手に取りやすい加工品という形にして、それをただ売るのではなく、一緒に材料である野菜のコトや食の安全を伝えることができるような工夫をしていき、若い方々も含めて農業の重要性を理解いただければと考えています

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